ルーティーン

私の家でのルーティーンは、だいたいがテレビのリモコンか携帯電話で始まっていた。

 

まず一番初めに、ライター、携帯、リモコンが頭か腕のどこかにあたり、それから母が机を叩いた後に立ち上がる。なんで口をきかないのか、聞こえているのか?と聞かれた後にお腹か脚が蹴られるか、頭を叩かれるか、髪を引っ張られるかしてバランスを崩す。

その後散々床に丸まっているのを蹴られて、息が切れてきたら、本棚に並んだエル・デコや、祖母が買ってくれた児童書、教科書で叩かれる。段々殴られる感覚が同じになってきた頃に机や棚や、クローゼットの中身を私に投げて大方出した後、ゴミ袋に詰めて捨てに行く。

その後も気が済むまでちょくちょく蹴られ殴られ、分かったのかどうなのか確認がある。

折角綺麗に使っていたのにな、という気持ちでゴムがキツく擦れた跡のついた教科書やエナメル製の鞄、破れたプリントや、折れたものや割れたものを眺めながら、元の位置に戻した。

 

そのまま怒りがおさまらなくて出て行けと言われた日には、朝までぽつぽつ手を動かしながら床で体育座りをしたままうたた寝をした。長引いて学校に遅刻したこともしばしばだった。

 

家出をしてから自由勝手に、気ままに暮らしてきた。他人の家に居候させてもらって、転々としてきた。3つ前の居候先から追い出されたとき、母と同じことをその人はした。一緒に暮らす前にどんなふうだったかをその人に言ったことを思い出した。

その人は、私の荷物を同じように雑にキャリーに詰めた後で、螺旋階段から全部中身をひっくり返した。特に体重計はすごい音で落ちていって、ステップの先についている滑り止めのゴムの軌跡が通っていた。彼は持ち帰ったキャリーを蹴りながら、「何をチンタラしとんねん、不法滞在で警察呼ぶこともできるねんぞ」と言った。私は手を動かしていたが、全然頭が働いていなかった。

 

私は私を棚に上げて、他人って他人にそういうことできるんだなあと思った。

なんとなく生々しいから、以前も話していなかったけど、住まわせてくれる他人に過去を話すことはしないほうが良いのだと学んだ。

でも今も他人の家で居候をしている。

 

本当は生活保護を受ければ良いけど、家族に通知が行くことを避けられないのと、障害者手帳を取ると自分が送りたい生活を送れなくなる可能性があるからだ。

折角今が一番楽しくて楽で、生活を阻害するなんらかの症状だって今が一番マシなのに諦めたくはない。

正社員として働きたいが、何もない3年のブランクと何も頑張ってきたことのない私、そして紹介されるものは皆無期雇用派遣。諦めてしまえばとっても楽だと思う。