2022-01-01から1年間の記事一覧

あなたが不器用だったから私は生きられた

私はしたたかだった、と思う。 賢さというのは相対的なもので、私の場合、私の対極にいるのは母で、明るくておっちょこちょいな母と過ごしてきた私は歳の割にはしっかりしていた。 バーで飲んで潰れた母を目的駅で起こす毎日、みたいな年もあった。 二人分の…

21.7.2昨日の昼も素麺だった。

夏場は素麺が安定して高い頻度で出てくる。 安くて、簡単で、美味しい。食事としてこの上ない。 くるりとトングで掴んだまま巻かれたざるの上の素麺の列。短冊に切られたきゅうりには最初の方の濃い麺つゆがちょうど良くて、錦糸卵には少し辛く感じる。茗荷…

お父さんへ

お父さんへ お久しぶりです。 〜 あれからお元気にお過ごしですか? 私はあの後、アルバイトと住まいを転々とし、ようやく今年から●●●の●●として働いています。 まだまだ先行きの見えない不安はありますが、出会ってきた方々のおかげで、こうして気持ちも前…

始まりの木の下で

父は最後に会ったとき、奥さんが席を立ったその後で「愛しているから、僕は愛しているから」と言って抱きしめてくれた。 彼氏は、と聞かれてできないよ私なんかに、と言ったことに対しての遅れた返事だったのだと思う。 あれから3年経ち、私のことを愛してく…

ルーティーン

私の家でのルーティーンは、だいたいがテレビのリモコンか携帯電話で始まっていた。 まず一番初めに、ライター、携帯、リモコンが頭か腕のどこかにあたり、それから母が机を叩いた後に立ち上がる。なんで口をきかないのか、聞こえているのか?と聞かれた後に…